「会いたいよ・・・・」
毎晩一人になると、とてつもなく寂しくなる。
大切なものは、もう手の届かないところへ行ってしまった。
悲しい、なんて簡単に言い表せるほど小さくなくて。
どうすればいいか分からず、私は途方にくれている。
大きすぎる喪失感は、いつになっても消えることがない。
「会いたいよぉ・・・榊(サカキ)・・っ・・」
生まれて初めて愛しいと思ったあの人の名前を呼んで、このまま涙が枯れてしまうんじゃないかと本気で思うほど泣きつづける。
いっそ忘れてしまえれば、どんなに楽なんだろう。
ねぇ榊。
私、できることならそっちに行きたいよ。
もう1度だけ。1度でいいから、会いたいよ――・・・・。
――「唯(ユイ)・・・・」
俺はポツリと、何度目かになるか分からないぐらい口にした名前を呟いた。
生きてきた中で、1番愛しいと思った奴の名前だ。
俺の今居る場所は時間の感覚も痛みも快楽も感じられなくなった場所。
縛られるような思いのまま、俺はここを漂っている。
一人の女に執着しすぎて俺はここを抜け出せない。
・・・仕方ねぇじゃねぇか。
あいつを忘れるなんて、無理な話なんだから。
あいにく相手の幸せを願って「俺のことなんて忘れて次の奴を見つけろ」だの「俺のせいで泣くな」なんて言えるほど、俺はお人よしじゃない。
いや・・・・むしろ。
唯、俺は、俺のためにお前に泣いてほしいんだよ。
今でもお前は、俺を思い出して泣いてくれてるのか?それとも、もう別のパートナー見つけた?
――会いてぇな・・・・・。
たった1度だけでもいい。もう1度会って、思いっきりお前を抱きしめたい。
出来たら、一緒に連れて行きたい。
そうすれば、この想いが伝わってるかどうか確認しなくて済むのにな。
でもそれは無理な話だって分かってる。
だから俺は、今ここでお前を想う事しか出来ないんだ。
「あぁ・・・全く」
『あぁ・・・どうして』
――「何で俺、死んだんだろう・・・・」
――『何で私、生きてんだろう・・・・』
相手はもう、自分のことなんて忘れたかもしれない。
ひょっとすると、もう別の人生を歩み始めてるかもしれない。
それなのに、この狂おしいまでの想いはとどまることを知らなくて。
忘れてしまえれば楽だけれど、忘れるなんて出来ないのは自分が1番よく知っている。
――あぁ。
どんなに相手のことを想い続けても、
それを伝える術なんて、もう持っていないのに。
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