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● 私の彼氏は・・・・ --- 三角関係!? ●


「おはよ、黒澤さん。」
「お、おはよー!」
あのキス事件から数日後――今日は朝一で岡田君が挨拶してくれた。しかも極上の笑みで。私はそんな彼に少しだけ戸惑いながら挨拶を返す。
周りから見てたら物凄く自分、ぎこちないんだろうなぁ・・・。
そんな事をぼんやりと考えていると。
「うーっすアリサぁー。」
「ぎゃぁ!!?」
後ろから聞き覚えのある声と共に誰かがいきなり抱きついてきた。いや、この声からしてあの人なんだろうなー・・・とは思うけど・・・。
「・・・先輩・・・。」
私はゆっくりと振り向きながら呟く。そこにはやっぱり、自分よりも大部背の高い先輩が居て。耳についているピアスがジャラジャラと揺れる。
「もう・・・・イキナリはやめてくださ――」
私はそこまで言って口をつぐむ。
ったくこの人たちは・・・朝から威嚇しあってどうすんだぁ!
思わず心の中でそう毒づきたくなるほどの睨み合いが、私を挟んで始まっていた。
・・・だからやめてって・・・!
「おはようございます富樫先輩。」
「誰お前?確かこの前俺に歯向って来た奴だと思うけどー・・・名前知らねぇんだよなぁ。」
礼儀正しく、でも目は冷たい岡田君がそう挨拶する。それに対して先輩は思いっきり喧嘩を売るような口調でニッと笑いながらそう言った。
・・・・・・・この人絶対岡田君の事見下してるよ?
でも岡田君の方は自分に向けられたその言葉をあくまで冷静に受け取ると、
「俺は1年の岡田悠って言います。これからも黒澤さんの事でいろいろ接点が出来ると思うんでよろしくお願いします。」
軽く会釈しながらこう言ったのだった。
・・・・って、何でそこで私の名前が出てくるのかは謎なんだけど。
そして岡田君は、面白くなさそうにしている先輩を1度だけキッと睨んでから「じゃぁね、黒澤さん。」と爽やかに笑って行ってしまった。
何か・・・・・・・裏表の激しい人だなぁ・・・・。
私は1人暢気にそんな事を考えていた。でも、
「アリサ、あいつには気をつけろよ。」
先輩はというと、いつになく真剣な表情でそれだけ言って行ってしまった。結局私は1人ポツンと、ワケが分からずその場に立ち尽くす羽目になったのだった。

――「それはやばいよアリサっ!!立派な三角関係じゃん!!」
場所は移って教室に。いつものように私は優美ちゃんと話をしていた。話題は勿論今日の朝の出来事。
「・・・・・・さ、三角関係!?」
私は彼女の発言に驚いて素っ頓狂な声を上げる。
ささささ、三画関係って!!大体私岡田君の事好きじゃないですし!!いや、その前に向こうも私の事なんて――
「なーに考えてんのアリサ!!この前のことと言い今朝の発言と言い、岡田君は絶対アンタに惚れてるよっ!」
私の心中を悟ったらしい優美ちゃんはすかさずそう口を挟む。そして、
「全くアリサは鈍感なんだからー・・・。」
なんてため息混じりに呟いた。
・・・そこまで言わなくてもいいじゃん!!そりゃぁまぁ・・・・私も鈍いけど・・・・・。
微妙にへこんだ私とは対照的に、エンジンのかかってしまった優美ちゃんはハイテンションで話し続ける。
「大体アリサはさぁ、富樫先輩と付き合うって時だって鈍すぎたのよ!普通アレだけ何回も自分の事ジロジロ見られてたら気づかない?」
「うっ・・・!!そりゃぁ・・・・まぁ・・・・・。」
ビシッ、と人差し指を突き立てられて怯んだ私はもごもごとそう呟く。
えーっと・・・・・・先輩と私が付き合うきっかけになったのは・・・また今度詳しく話すとして。
「・・・で、その三角関係はどうすればいいの?」
私はウルウルした瞳で優美ちゃんにそう問いかける。でも、
「アリサ・・・・・そんな目してもだめよ。」
・・・・くそぅ。引っかかってくれると思ったのに・・・。得意なんだけどなぁ。捨てられた子犬の目。
・・・・いや、今はそー言うことじゃなくて!!
「優美ちゅわぁ〜ん!!」
こんな展開に慣れていない私は、ワァッと優美ちゃんに泣きつく。けれど優美ちゃんは、
「フッ・・・・。甘いわねアリサ。こう言う時に助けを求めるのは私じゃなくて富樫先輩でしょ?」
真剣に悩んでいる私を尚も楽しむかのように彼女はそう言った。そして私は突き放される。
・・・・・うー、何か・・・・私って惨めだ。
でもそう落胆していると、打って変わって急に優美ちゃんがニコッと気味が悪いほどの笑顔を浮かべる。
「とにかく富樫先輩に今の自分の気持ちをもうちょっと詳しく話してみたら?あの人ふざけてるように見えるけど実はアリサ激ラブだからさぁ♪」
・・・何を言うかと思ったら・・・・。そんな事かぁー・・・。
・・・・・・ん?激ラブ?って・・・言った、よね?まっ、まさか先輩が・・・・・ねぇ。・・・・ありえないって。
そう思いながらも急速に頬が熱を帯びていく。
ヤバッ・・・・そんな事言われたら素で恥ずかしいよ・・・・!!
リンゴのように赤くなった私を見て、こうなってしまった原因を作った人物は「可愛いなぁアリサ」なんて言って笑っている。
こんなメンバーに囲まれながらこれから私はどうなるんだろう・・・・。
今後の事を考えると、気が重くなるのを感じた。
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