6.活動開始
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「とりあえず、俺たちから坂下に事情を聞いてみた方がいいな」
 言ったのは爽也で、彼はいつになく真面目な顔でこの場を仕切っていた。
 ちなみに美夜はと言うと「帰る」の一言を告げて生徒会室から飛び出していった。今はそっとしておいた方が良いという事で、後を追うものもおらず。
「それにしても矢野先輩、狩野先輩と坂下先輩のことに何でそんなに必死なんですか?」
 にたり。
 明らかに裏があるのを期待して言った充の頭を、爽也は軽く叩く。
「ふざけんなっ。俺はあいつらのためを想ってやってんだよ。それに狩野があんな調子じゃ気が狂うだろ?」
「まぁ・・・そうですけどねぇ」
 何処か納得の行かない表情で頷いて、充は大げさに頭をさする。
 そこに「でも」と割って入ったのは麗。
「副会長って、案外いいところあるんですね」
 にこ。
 誰もが心を奪われるその笑顔を爽也に向け、彼女は言った。
「・・・・・・・・・」
「あれ、副会長?」
「あー、何赤くなってんですか先輩!!水沢さん、駄目だってむやみにそんな笑顔向けちゃ!」
「へ?」
「だぁー、もうお前は黙れ日下部!!」
 麗の顔を呆けたように見つめて固まった爽也をからかう充。そしてそんな充を物凄い動揺ぶりで咎める爽也。
 ・・・・何だこのお子チャマ精神は。
 この時静かに聖が溜息をついた事は誰も知らない。
 けれど、当の本人の爽也は本当に心臓バクバクでまともに麗の顔も見れない状態だった。
 おかしい。絶対おかしい。
 彼は心の中で何度もその理由を探る。
 ・・・そうだ。さっき手を握られた時だ。あのせいで何だか調子が狂ってしまう。
 彼なりにそう自分を納得させ、それから心を落ち着ける。
 ずっとライバル視しているこの生意気な年下会長を好きになるなんて、そんな事自分のプライドが許さない。
 そうだ。いつかこの会長(と、生徒会メンバー)を見返すまで自分はしっかりしていなくては!!
 そう思った瞬間、彼の中で踏ん切りがついた。
「よし、じゃぁ俺と一緒にこれから坂下に事情を聞きに行く奴!」
 はい!と掛け声をしてまで挙手を求めた爽也だったが。
 虚しくも、誰一人として手を上げようとしない。
「おい、やる気あんのかテメェら!」
「だって俺、先輩と二人なんてかったりぃしー」
 これは充の言い分で。
「私はそう言うの苦手ですし」
 控えめに、けれどきっぱりとそう言い切ったのは聖。
 となると残るは麗のみ。3人の視線も自然と彼女に集まり・・・
「えーと、私は・・・」
 麗が手をあげなかった理由は、わざわざ進んでまで爽也と二人で事情聴取、という気にもなれなかったからだ。
 けれど残っているのは、明らかに自分のみ。
「・・・水沢さんを副会長と二人っきりにするのは危険だけど・・・君なら大丈夫だ!頑張れ!」
「どー言う意味だ日下部」
 充はこの日2度目の爽也からの叩きを食らう。
「あー、いいですよ。別に」
 これ以上話が長引くのもなんだったので、麗は仕方なく承諾した。
「副会長一人だと話がややこしくなる場合もありますし」
「お前も失礼な奴だな水沢?」
「いえいえ、それほどでもありませんよ」
 爽也の言葉を笑って流した麗に、密かに「良く言った!」と声をかける充。
 こうして生徒会メンバーにより、全く持って生徒会に関係ない活動が開始される。  
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