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● 私の彼氏は・・・ --- 6 うちの後輩に手を出すな ●

「・・・・合コン・・・・?」
「そっ!今度の土曜日。ねぇ行こうよアリサ〜」
駄々をこねる子供のように私の腕を引っ張る優美ちゃんを見ながら、私はただ困惑していた。
・・・合コンって、今の私には不可能な事なのでは・・・・!?
「む・・・無理!!」
「えー!?だって人数足りないんだもんっ。相手はうちの学校の近くの高校生だし・・・アリサには富樫先輩がいるから関係ないかもしれないけど私には大有りなの!!」
ごめん優美ちゃん。私その先輩が居るから行けないんだよ・・・。
「でも合コン行ったなんて先輩にばれたら・・・私殺されるかも」
そう言って優美ちゃんから離れようとした私の手を、それでも彼女はグイッと掴む。
そして潤んだ瞳で一言。
「大丈夫よ!見つからなければ!!」
「その自信は何処から?」
見つかったときが大変なの、あなた分かってます?
「・・・本当にダメ・・・?」
それでも尚優美ちゃんは言って、すがるような目で私を見る。
「・・・・」
見つめられるまま、しばし沈黙。
・・・・あーもうそんな目で見ないでよー!!
「・・・分かったよ・・・行くよ、人数あわせに」
黒澤アリサ、ついに折れました。押しに弱い自分が情けないです。
「本当!?」
言った瞬間、優美ちゃんの顔がパッと輝く。
「じゃ、土曜日にアリサの家まで迎えに行くからねー♪気合入れていかないとっ」
「・・・・」
さっきとは打って変わった親友の表情。
・・・・・・・・・はめられた。
その後私は、念を押すように何度も「人数合わせに行くだけだからね!?」と言ったけれど、優美ちゃんはすっかり緩んだ顔で「分かってるよー」の一言だけ。
本当に分かってんの、優美ちゃん?私の生死に関わることですよ!?
あーもう何で引き受けちゃったんだよ自分の馬鹿ー!!
けれどどれだけ嘆いてももう遅く、気づけばあっという間に土曜日・・・。
その日朝からあたふたとしていた私とは対照的に、事前に約束した時間に優美ちゃんは余裕の顔で現れた。
「いい人見つかるといいよねぇ」
「私には関係ないねぇ」
「・・・もー、何むくれてんのアリサ!どうせ行くんだったら男が目的じゃなくても楽しまなきゃ!」
・・・・・楽しめるわけないっしょ。
合コンって基本的に異性との出会いを求めるものですし。それに割り勘だからっていろんなもの食べまくってもそれはそれで悲しい。
「憂鬱だー」
「何言ってんの!協力してよアリサv」
「・・・・・」
気分はどんどん落ちていくばかりです。
まぁそんなこんなで半ば強制的に連れて行かれたのは来たこともないお店。
「遅いよ優美!アリサ!」
「ごめんなさぁい、ちょっと諸事情があって・・・」
先にきていた友達が私たちを呼んだ。当然そこには相手の男子生徒が居るわけで、優美ちゃんはちゃっかり猫なで声で返事なんかしちゃってる。
何ていうか・・・・戦闘開始って感じ・・・?
「行くよ、アリサ」
「う゛ー・・・」
優美ちゃんは私の耳元で小さく言うと、足早に席に向かう。そして渋々それについて行く私。
席につくと、目の前には揃いも揃って男前な方々の顔。
思いっきり優美ちゃん好みなのですが・・・・大丈夫なんでしょうか?
「お待たせ」
にーっこりと営業スマイルで言って、優美ちゃんは席につく。が、その直前にさり気なく素早く相手の人たちをチェックしていた。
さすが優美ちゃん・・・・。
何か先行きが不安だよ・・・・・。
誰にも悟られないように小さく溜息をついて、私は椅子に腰掛けた。それから顔を上げて――ちょっとだけ、固まった。
相手の高校生、みんな男前なんだよ。みんな好青年っぽくてさわやかなんだよ。
・・・・・・なのに何故私の前だけこんな不良みたいな人・・・!?
何?もしかして私、そう言う系統の人に相当縁があったりするの!?
そんな事を思いながら、目の前の人物を伺うような目で見ていると・・・運悪く、目が合ってしまった。
ひぃぃぃー!どうしよー!!
えっと・・・いきなり目逸らしたら感じ悪いし後で何かされそうだし・・・ここはとりあえず笑っとくか!?
・・・よし。がんばれ自分!
へにゃ。
「・・・ぷっ」
「!?」
わ、笑われた!?何この人感じ悪い!それとも”へにゃ”って笑い方が相当可笑しかったの!?
いずれにせよ、恥ずかしい・・・・。
あー、もう最悪だぁー!!
小さく吹き出した、目の前の茶髪の長めの髪の人から目を逸らし、私は俯いた。
頬が徐々に熱くなっていくのが分かる。
「えーと、じゃぁ人数も揃ったし自己紹介しましょう?」
と、そこで口を開いたのは友達の一人、奈美ちゃん。いつもはサバサバしてて感じの良い子なのに、今日は髪の毛とか服とかかなり気合入ってる。やっぱりみなさん男目当てなんですね・・・。
「そうだね。じゃぁ、先ず俺らから。」
答えたのは、奈美ちゃんの向かいに座る男子で感じのよさそうな笑顔で言う。
「俺はS高2年の坂田学って言います。野球部のキャプテンやってるから体力には自身あるよー」
なるほど、野球部らしい爽やかな笑顔の彼は締めにとびっきりの笑顔で言った。
そしたら周りから拍手が起こって、慌てて私もそれに続く。チラッと友達の顔を見ると、みんなめちゃくちゃ上目遣いになっててビックリ。
何ていうか・・・必死さが伝わってくるよ。
続いて坂田君の隣の方の挨拶。
「俺も坂田と同じで2年の橋田明人って言います。勉強なら得意だから、いつでも教えてあげるよ」
「マジで?私数学苦手だから絶対教えて欲しい!」
「私もっ」
さっきの坂田君とはまた違う、可愛い系の笑顔でそう言った橋田君に物凄い勢いで食いつく優美ちゃんたち。
凄いなぁ、とか思いつつその後の人の自己紹介も見ていると。
ついにやって来ました、私のお向かいサン。
彼はずっと頬杖をついていて、その体制のまま目線だけ上げた格好で。
「有沢力(りき)って言います。部活とかは面倒だから入ってないや、ゴメンネ。」
ニッと笑ってそう言って、片手をヒラヒラと振る。
「・・・・。」
女性人一同沈黙。
そして、その直後。
「よろしくー!!」
みんなとびっきりの笑顔で、有沢君にそう言う。
(絶対この人ゲットする!何が何でも連れて帰る!)
(よぉーし!!有沢君一本で行くか!ってか何でアリサの向かいなのよー!)
(何あれ!?ヤバイって!ごめんみんな、あの人は私が貰うから!)
あぁ、なんか・・・みんなの心の声が聞こえてくる。女って怖いよ・・・。
「じゃ、次は有沢の向かいの人ね。」
「へっ?」
気が付いたら橋田君の声が聞こえて、みんなの視線が私に集中してて。
あんまり突然だったから結構間抜けな声が出て、まさかと思って前を見るとまた彼が嫌味な感じで笑ってて。
だぁーもう!!私が何かしましたか!!もういいよ、私は男をゲットしたくて来たわけじゃないし、思いっきり無愛想で言ってやるっっ。
そう心に誓って、意気込んで口を開いたんだけど・・・
「黒澤アリサ、N高の1年です。よろしく。」
「よろしくー。黒澤さんってナチュラルな感じで何かいいよね。」
「うん。サッパリしてそうだよな」
何故か返って来たのは、男性人のお褒めの言葉で。
「え、ど・・・どうもー・・・」
わざと最低限の化粧しかしてこなかったのに、逆効果だったみたいなのですが。
・・・・・何この予想外の展開!!
「でもアリサ、ちょっと天然のところあるからねっ」
「うん。たまに面白いことするしね!」
「あ、ホラ。それにアリサには彼氏居るしね!」
「う・・・うん・・・。」
そして凄い勢いで襲い来る、友達の言葉。どうやらみんな本当に必死らしい。
たとえ仲間でも、一人でも多く可能性を無くしておきたいんだね・・・。
「天然って可愛いけど・・・へぇ、彼氏居るんだ。」
「あー、ちょっと残念かも。ってか、何で合コンに?」
「ちょっといろいろあって・・・」
お世辞は有りがたいけど、それ以上何も言わないでください!!友達の視線が痛いんですよぅ!
「ふーん。彼氏いるんだ。」
「・・・まぁね。」
最後にそう言ったのは有沢君で、何故か「意外」みたいな顔で言う。失礼だなコイツとか思いつつもそう答えて、それから自己紹介は隣の優美ちゃんに移った。
一先ずみんなの意識が自分に向かなくなった事にホッとして、私は少しだけ気を緩める。
自己紹介中の友達の声は物凄い猫なで声で、良くやるなぁ・・・なんて考えながら。
合コンって・・・・・こんなに疲れるもんなんですか・・・・・!?

*続く*


作者:事情により題名と内容がちょっとズレました;;ゴメンナサイ〜。゚(゚ノД`lll゚)゚。
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